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カンボジア古典舞踊の種類

◆民衆舞踊 : カンボジア人なら誰もが踊れる楽しい踊り。
4月のカンボジア正月などに皆で踊ります。

◆ 民俗舞踊 : 人々の暮らしや、農作業の中で生まれた踊り。
ココナツダンス、魚捕りの踊りなどが有名です。

◆ 古典舞踊 : 神々にささげるために宮廷で伝えられてきた踊り。
アンコール・ワットの壁画から作られた、アプサラダンスなどが有名です。

カンボジア古典舞踊の歴史

千年の歴史を持つカンボジア古典舞踊は、一言で説明すると 「アンコール・ワットに伝えられる踊り」 と言えます。

8世紀後半から隆盛したアンコール王朝では、宮廷で宗教儀式の際に、神々や王に舞踊や音楽が奉納されていました。

14世紀にアンコール王朝は滅びましたが、古典舞踊はいつの時代も王室の保護を受け、宮廷で伝えられてきました。

そして、19世紀フランス植民地下でのアンドゥオン王の時代に再興され、20世紀半ばコサマック王妃の保護下で素晴らしい発展を遂げました。

しかし、1975年から4年間続いたポル・ポト政権の圧政により、伝承者のほとんどが失われてしまいました。
その後、民族の誇りをかけて復興が図られた結果、2003年にはユネスコの「人類の口承および無形遺産の傑作」(世界無形文化遺産)に選定・登録されました。

カンボジア古典舞踊の魅力

■表現しているもの

自然・祖先崇拝などのアニミズム、ヒンドゥー教、仏教に基づく、クメール民族独自の壮大な宇宙観。

■ ソンペア・クルー(お祈りの儀式)

代々の師匠の魂や神々に礼を捧げる儀式で、公演前や毎週木曜日に行われる。冠やお面には魂が宿ると信じられており、それらにお香、ろうそく、ジャスミンの花、供物などを捧げる。

■踊りの音楽(ピン・ピアット)

舟形をした木琴ロネアト・トン、壷形の小打楽器を円形に配したコン・トーイ、ばちで叩く大太鼓スコー・トム、鉄琴のロネアト・ダエク、縦笛のソロライなど7つの楽器による合奏に、男女3人の唄い手がつく。冠婚葬祭や寺院での儀式でもよく聞かれる伝統的な演奏。(「もっと知りたいカンボジア」 音楽と文学参照」)

■題 材

舞踊の主な題材は、古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ物語」のカンボジア版といえる「リアムケー」や、カンボジアの建国神話にも登場する天女アプサラなど。

■役 柄

古典舞踊では、王や夜叉を含む男役も女性が務める。
男女の組踊りでも女性が男役を担うが、例外的に、猿と仙人の役は男性が務める。

■衣装や装身具

金銀に輝く衣装や高い冠などの装身具を身に着けて踊る。蛇神ナーガや宇宙の中心である須弥山などを模している。

■ クパィ・ダイ(手の型)

手や足、胴体などの動きはそれぞれ意味を持ち、4千以上ともいわれる型がある。花が開いては閉じるような指先は、植物の命や宇宙の循環を表現している。(動画参照)

■ 身体の動き

手足の指の反りや、ソンコット・クリアンと呼ばれる重心を下におく独特な姿勢、蛇神ナーガを連想させる、滑らかで回るような身体の動き、そしてその中に微妙な緩急を付けるリズム感を特徴としている。